季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
壮介と彼女が仲良くキッチンに立っていた姿を思い出して、ムカムカしてきた。

今頃壮介のやつ、鼻の下伸ばして、あの女といちゃついてるんだろう。

グラスに残っていたモスコミュールを飲み干して、おかわりをオーダーした。

「昨日みたいに飲みすぎたらダメだよ。」

マスターは優しく笑いながらモスコミュールを差し出した。

「気を付けます…。」

昨日の失態を思い出して、思わず苦笑い。

「それで、今日はこれからどうするつもり?寝泊まりする場所は確保した?」

「いえ…それがまだ…。」

壮介からお金を返してもらえなかった事や、結婚前から落ち着くまでは仕事を気にしなくていいように、派遣先との契約を昨日までにしていた事を話した。

「すぐに見つかるかはわからないけど、早く次の派遣先を紹介してもらわないと。今のままじゃ新しい部屋を借りる事もできないし…。」

「そうか…。」

マスターは腕組みをして少し考え込んでいる。

「なんにもないけど、新しい部屋を借りるまでうちの店の事務所で寝泊まりする?」

「えっ、いいんですか?!」

「朱里ちゃんがいいならね。シャワーとトイレと簡易キッチンくらいはついてるけど、ホントになんにもない場所だよ。」

「じゅうぶんです、雨風しのげれば!」

マスター、なんて優しいの!!

世の中にはこんないい人もいるんだな。





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