季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
「ああそうだ、ここにいる間、家賃代わりに店手伝ってくれたら助かるよ。洗い物とか。」

「もちろんやらせていただきます!!洗い物でも掃除でも、なんでも言って下さい!」

「へー、なんでもだって。じゃあ夜の相手もお願いしちゃえば?マスター。」

「えっ?!」

突然割り込んで来た失礼なその男は、人をバカにするような目で私を見た。

「懲りもせずにまた酒飲んで。学習機能ってものがないのか?」

じゅ、順平がなんでここに?!

「ああ順平。もうそんな時間か。」

マスターは腕時計をチラッと見た。

「朱里ちゃん、昨日は随分酔ってたから覚えてないよね。こいつ順平。昨日君が連れ出されそうになったのを阻止したバイトくん。」

「えぇっ?!」

最悪だ。

最悪だ。

最悪だ。

あんなところ順平に助けられたなんて!!

「礼のひとつも言えねぇの?」

順平は私を見下して勝ち誇ったような顔をしている。

悔しいけど助けてもらったのは事実だ。

「もしかしてあれか、あの男についてけば体と引き換えに今夜は泊まる所に困らないと思ってたとか?まんざらでもなさそうだったしな。」

酔っていたとはいえ、実際似たような事を考えたから返す言葉もない。


順平よ、それは仕返しなのか?

もしかして、私が勝手にいなくなった事を、まだ根に持ってるのか?


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