とっくに恋だった―壁越しの片想い―


「ごめん……。今日、大学のころの友達と飲んでて、華乃ちゃんの話だしたら見たいって話になっちゃって。止めたんだけど、他のヤツらに足止め食らって」

申し訳なさそうに言う平沢さんに、最初に聞こえてきた会話はそれか、と納得する。

大学のころの友達は、私のことなんて知らないハズだ。

それなのに、その人たちが集まる場で、平沢さん以外知らない私の名前を出したって、盛り上がりもしなければ迷惑なだけだろうに。

それを平沢さんだってわかってるくせに、なんでわざわざ私の話なんて……と聞きたくなったけれど、その疑問をぐっと飲み込む。

聞いたところで、答えに期待をしてしまうだけだから。

「だいぶ酔ってるんですか? 顔は赤くないですけど」

平沢さんとは、ご飯を食べながら飲んだことは何度もあるけれど、私に合わせてなのか、飲んでもせいぜい一本だった。

『華乃ちゃん、3%のチューハイで酔っちゃうんだ。顔、赤くなってきてる』
『平沢さんは変わりませんね。ビール飲んでるくせに』

『んー、割と強いみたい。この間、職場の先輩と飲み比べしたけど、中ジョッキ三杯飲んでもほろ酔いくらいだったし。顔色も変わんなければ、翌日も普通だったなー』

『うわぁ。将来はベルトにお腹がたぷんたぷん乗っちゃう感じですね。消化器とか循環器、さらには色んな神経がじょじょにアルコールに啄まれていって、色んな病気に……』

『俺、ちょっとビール控えるわ』

そんな会話をしたのは確か、春先のことだ。

よほどアルコールには強いんだろう、というのは覚えているけれど……恐らく多少酔ってるんだろう。
だって、靴下で出てきてるんだから。




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