夏 恋 花 火

――裏庭。

ついに、ついに、放課後が来てしまった。

あー、どうしよう、緊張する……。


当たって砕けろという言葉を思い出して、一人で頷いたり、頭を抱えたり、百面相していた。


“後悔するよりずっといい”


そうだ。

ダメで元々。

気持ちを伝える事に意味があるんだから。


そんな時、どこからか甘っとろい声が聞こえてきた。


「好きです、先輩」


うわ、私、告白現場に立ち合わせちゃった?

そーっと声のする方を見るとそこには……


え?

あれは…俊也?!


俊也だ、どう見ても。

私は思わずそばの木に隠れた。



“先輩”って事は、俊也の後輩?


背が小さくて、目がくりっとして守ってあげたくなるような女の子。

私とは大違いだ。


その女の子は、また甘ったるい声で続けた。



「花火大会、一緒に行きませんか?」


言っちゃった…。

ていうか何、あの上目遣い…!

しかも声をものすごく鼻にかけてるし…!


俊也、こういう子が好きなの…?


気がついたら、“早く断って!”と祈る自分がいた。

何でこんなショックなんだろ…?


北川先輩とは、全然違う気持ち。

固唾を呑んで見守ってると、俊也は後ろ頭をかいて、こう返事した。

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