夏 恋 花 火

「じゃあ、今日の放課後、部活終わった後でもいい?」

「え?」

「裏庭で待っててよ。話きくから」


先輩はそう言って、優しく微笑んでくれた。


「…はいっ!」


先輩は「じゃあ」と笑って教室を出て行った。

しばらくその後姿から目が話せなくて、じっとしていた。


すると、後ろから絵理が飛び掛ってきた。


「よかったじゃん!友香!」

「き、緊張した~。でも全然よくないよ、まだ誘ってもいないんだよ…?」

「でも一歩踏み出せたじゃん!大丈夫だよ。頑張って!自分の気持ち伝えてきな」

「う、うん」

「顔、ゆでだこみたい。あ~あ、見てて恥ずかしいわ」


そう割り込んできたのは、俊也だ。

またこいつは。


「たこじゃないし!うるさいなぁー ほっといてよ、馬鹿!」

「馬鹿で悪かったなぁ!たこ!」

「だから、たこじゃない!」

「お前なんかたこ焼きにされて食われちまえ!」

「ちょ、俊!待ちなさいよ!俊!」



そう言って俊也はあっかんべーをして、自分の席へと戻っていった。



「何あれ。意味わかんない」


私がご立腹のポーズをすると、絵里がなぜか笑いをこらえていた。

思わず首を傾げる。


「なぁに笑ってんのー?」

「俊也くん、焼もち焼いちゃったんだよ」

「何じゃって?」


すると急に絵理に抱きつかれた。


「うわあ!」

「もーう、何か二人可愛いすぎる!初々しい~」

「はぁ?ちょ、絵理~?」


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