どこにも行かないで、なんて言えないけれど
まぶたが震えた。


唇を噛んで声を押し殺す。


……泣くな泣くな泣くな。泣いたらみじめになる。


クッションを抱き寄せて顔を埋める。


ふわふわの布地に、ホットミルクのほのかな甘さが、かすかに残っている。


おなかがじわりと温かい。


きつく、抱き締める。


真っ黒な視界に、どくん、と、鼓動がうるさく響いた。


「……っ」


それがひどく苦しくて、わたしは。





≪完≫
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