どこにも行かないで、なんて言えないけれど
蘇る記憶に眉をしかめる。


――ねえお兄ちゃん、来年もケーキもってきて!


そう言うのが精一杯だったわたし。


――約束だから!


勝手に指切りをしてしまうのが精一杯だった、幼いわたし。


わざと元気いっぱいにふるまって、騒いで、子どもだからなんて理由で繋ぎとめようとした、ずるいわたし。


でもね、でも。


本当は、ずっとね。


手を繋いで、

隣に立って、

来年も一緒にいられたらいいねって、対等な笑顔で言いたかった。
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