どこにも行かないで、なんて言えないけれど
ぶわりと暑いほどの暖かさが冷えた体を温める。


食卓に並ぶ、いつものクリスマス用のメニュー。


真ん中があいているのは、そこに碓氷さんが持ってきてくれるはずのケーキを置くからだ。


変わらない配置に、今年はまだ姿を見せていない配達人を想う。


「あら風花、今日は随分おしゃれね」


家の中ではジャージ、という普段のわたしのズボラっぷりを知っているお母さんが、首を傾げた。


「っ」


なぜか、なんて決まっている。

分かりやすい恋心。


たとえ今さらでも、自分の思いが筒抜けな状況が恥ずかしいのに変わりはない。


だから、幸いにも分かっていないお母さんが、どうかどうか、分かってしまいませんように。


そんな願いむなしく、お父さんが暴露した。


「碓氷さんとこの一人っ子が来るからだろ?」


何て言ったっけか、ほら。


お父さんの説明に、お母さんもようやく合点がいったらしい。


「昔はねえ、お嫁さんになるの、なんてねえ」

「っぎゃー!」


お願いだから、微笑ましげにしないで……!


真っ赤な顔でがくりとうなだれるも。


わたしにはお構いなしに、嬉々として傷をえぐる両親。
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