どこにも行かないで、なんて言えないけれど
「パパは認めない! って騒いだな」

「そうしたら、パパなんかきらい! って言われてあなた落ち込んじゃって。面白かったわあ」

「仕方ないだろう、大事な大事な娘だぞ?」

「やーめーてー!」

「あら、何で?」


ぐっと唇を噛む。


「照れるでしょ! 小さいころの失態を持ち出されて照れない人がどこにいんの!」


鮮明に覚えている。


涙目でお父さんをにらみ、挙げ句わたしは、あの台詞を……!


「――失態とは悲しいな」

「碓氷さん!?」


あああと唇を引き結ぶ。


見られてた。一部始終見られてた……!


わざとらしく肩をすくめてみせたのは、コートを腕にかけて白箱を提げた碓氷さん。


全然気づいてなかったけど、実はいたらしい。


「いつ来たの?」

「さっき。悲しいな、気づいてくれないとは思わなかった」

「だって、連絡なかったし、そしたらいないと思うじゃない!」


何でと詰め寄ると、「サプライズでって言われて」とお母さんを見る。


「お母さん!」

「我が娘ながらアホだなって思いながら見てたのよ」

「お母さん!!」


あははと笑う三人。


なんてひどい人たちだ。


むす、と眉をしかめると。


いたずらっぽく瞳をきらめかせて、碓氷さんがこちらを振り向いた。
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