思いがけずロマンチック

備品倉庫は事務所を出て、会議室の奥にある。

ドアを開けたら片方の壁面には段ボール箱が無造作に積まれ、反対側の壁面には天井まで高さのあるキャビネット。二人すれ違うのがやっとという奥に細長い狭い空間は、備品倉庫というより書庫のようなものだ。


こんな部屋に有田さんと二人きり。
今ここで、お弁当のことを聞いてみようかな? 『美味しかった』と言ってくれたら嬉しい。そうしたら『明日も作りましょうか?』と言ってみよう。いやいや、ちょっと待って。もしも何か起こったりしたら……
などと良からぬ考えが頭をよぎる。


「何だか詰め込んだだけという感じだな、要るのか要らないのか本人も忘れているんだろう」


私の良からぬ妄想を断ち切るように、有田さんが苛立ち混じりの声を吐く。飛び出している段ボール箱を足で引っ掛ける背中だけなのに、不機嫌な表情を想像させられる。

何も答えられず質問することもできない私を残して、有田さんは奥へと進んでいく。部屋を見回す有田さんの顔には不満がいっぱい。


もしも今、私が何か言い出したら、有田さんはどんな顔で振り向くのだろう。
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