思いがけずロマンチック
段ボール箱の積まれた壁と反対面のキャビネットの鍵を開けた。幸いキャビネットの中は整然として、目当てのファイルは目線の高さより一段上の棚に並んでいる。
「ファイル、何冊要りますか?」
「五冊欲しい、届くか? 俺が取ろう」
私の肩越しから、有田さんが手を伸ばす。
こんな時、背の高い男性は頼もしい。邪魔をしてはいけないと思いながら体をずらそうと後退り。
何かを踏ん付けたような感覚がしたから、足元を確認するとボールペンが転がっている。屈み込んで、潰れていないのを確かめた。
「どうした? 頭気をつけろよ」
有田さんがキャビネットの棚に手をかざした。私が棚の角で頭を打たないようにと気を遣ってくれているらしい。
「はい、ありがとうございます」
私が立ち上がるのを見届けて有田さんは棚から手を離した。何事もなかったように段ボール箱の山へと視線を逸らした顔は、階段で私を助けてくれた王子様によく似ている。
何だろう、この優しさは。思わず見惚れてしまいそうになってしまう。