思いがけずロマンチック
翌日、有田さんに報告した。
笠間さんから閉店と新店舗の仕事を依頼したいと言われたこと。そして時期は未定だけれど移転先の下見に同行する予定だということも忘れずに。
「下見に? それなら俺も同行しよう」
有田さんがモニター越しに無表情な顔を覗かせる。さらに私を睨み付けるように見上げて、大きく息を吐いた。
「お前ひとりでは負担になるだろう、今回の企画の延長として私も力になるよ」
「有田さんも来てくれるんですか?」
正直なところ一緒についてきてくれた方がありがたい。笠間さんとふたりきりになるなんて緊張してしまうから。笠間さんに限らず男性とふたりきりというシチュエーションが苦手なだけなんだけれど。
「わかった、イベントは来週だったな、段取りと手配品に漏れがないかもう一度確認しておくように」
「はい、前日の午後から準備に行きますので業務にご不便をおかけするかもしれませんが……」
「気にするな、俺も手伝いに行くつもりだ、必要なら応援を頼もうと思っている」
「ありがとうございます」
有田さんの気遣いが嬉しくて深く頭を下げた。すると有田さんが歩み寄ってきて、私の肩に手を触れる。
「俺も礼を言いたい、弁当ありがとう」
有田さんが出社する前に、こっそりデスクに置いておいたお弁当の紙袋は背面の棚の上。有田さんのバッグの隣に当たり前のように鎮座していた。