思いがけずロマンチック
最寄り駅から港ホテルへ向かって歩いていくにつれて視界に映る建物は減っていく。日差しを浴びた波の輝きが視界に映り始めたころ、港の景色の中にひときわ輝くホテルの姿が見えてくる。
前に私が港ホテルに来た時は大雨の夜だった。しかも有田さんと一緒だったから景色を楽しめるような余裕はなかったけれど、今日みたいな天気の良い日中に歓迎会を開くのは正解かもしれない。
窓に映るきらびやかな景色を気にしながら担当者との打ち合わせ。会場の大きさやテーブルの配置、食事の内容や時間の流れなどを細かく確認した。
「では当日お世話になります、よろしくお願いします」
「こちらこそ、そういえば先日益子さんが遅れてこられる方がいらっしゃると仰ってました、人数をお聞きするのを忘れていたのですが聞いてませんか?」
ホテルの担当さんが遠慮がちに切り出した。
益子課長からは何にも聞いていないし、遅れてくる人が居るなんて出欠調査の回答にはなかった。益子課長と意思疎通ができていなかったとはいえ業務に関することは報告連絡していたはずなのに。