思いがけずロマンチック

「ちょっと電話が遠かったかな? 歓迎会にお邪魔しようかと言ったんだ、冗談だけどね」

「だったら参加してくださっても……」

「いや、本当に冗談だよ。おかげさまでお客さんが増えたから店を空けられそうにないんだ、新店舗の下見はもう少し先になりそうだよ」


笠間さんが言ってるのは、きっと新店舗の候補地を下見に行く件だ。この流れからすると下見に一緒に来てほしいと言われるのではないか。
もし言われたら有田さんも一緒に……と言わなければ。


「唐津さん、今度食事に行かない?」


笠間さんの言葉を予想して思いきり身構えていたというのに、投げかけられたのは意外な言葉だった。頭の中では予想した言葉に対するシミュレーションしかしていなかったから、すぐに切り替えができない。


「食事、ですか?」

「仕事から離れて話がしたいだけなんだ、平日の夜はどう? 唐津さんの都合に合わせるよ」


私の不自然な口調に動揺したようで笠間さんは申し訳なさそう。控えめな声で私に言い聞かせるように答えてくれた。

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