思いがけずロマンチック
「彼女のこと、心配じゃないの?」
「全部吐き出したら戻ってくる、信じているからね」
しっかりと重みのある声が、僅かに浸み出した私の不安を一瞬で拭い去った。不安も迷いも感じさせない落ち着いた表情には自信が滲み出ている。
九谷君の視線の先で、彼女はまだ有田さんに懸命に何か話している。さっきよりも勢いが衰えているように感じられるのは気のせいか。
「さっき、部長に会ったんだ。いろいろ聞かされて、彼女は心配してるんだよ」
「何の心配?」
「鈍いなぁ……彼女はアイツを助けようとして退職したんだ、わかるだろ?」
九谷君らしくない覇気のない穏やかな口調は、有田さんに詰め寄る彼女とは対照的。彼女を見上げる九谷君の横顔は見たことないほど穏やかで優しい。
まるで悟りきっているような余裕さえ感じられる。
たぶん九谷君は、本当に彼女のことを思っているんだ。
「もし彼女が……今も有田さんのことを好きだとしたら?」
「ありえないよ、俺に惚れてるからね」
九谷君は高らかに笑った後、余裕の笑みを浮かべた。