思いがけずロマンチック

益子課長が帰った後、のんびりと片付ける私を有田さんがじっと見ている。見ているのは私ではなく総務課の執務スペース全体なのだろうけれど、パーテーションのそばに立ったまま。

何か手伝ってくれるわけでもなく、視界に映り込むだけで気になってしまう。


「先に帰ってもらっていいですよ、戸締りはしておきますから」


視線に耐えられず声をかけたけど、灯りの消えた事務所へと向き直っただけで動く気配はない。何をしているんだと振り向いたら、ふいと目を逸らす。


「部下を残して先に帰れるわけないだろう、余計なことは言わなくていいから早く片付けろ」


なんて突き放すように吐いて、まだ突っ立っている。益子課長はとっとと帰ったよ、と言おうとして思い出した。

有田さんに、まだ聞いてないことがある。


「余計なことのついでに聞いてもいいですか?」

「何だ? 手を止めずに話してみろ」


やっぱり、予想通りの命令口調。何を聞いても上から目線の話し方、偉そうな態度が気に障る。新経営責任者とはいえ、もう少し相手に対する配慮が必要だと思う。



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