思いがけずロマンチック
有田さんが企画書の抜けを補う説明をしてくれたおかげで、笠間さんは企画の見直しをすんなりと受け入れてくれた。当初は困惑していた様子だったけれど、見直しを期待すると言って喜んでくれたのが嬉しい。
それでも私の気持ちは晴れなかった。
笠間さんの店を後に会社へと戻る有田さんと私には、会話もなく気まずい空気が漂う。
ちょうど帰宅ラッシュに重なった駅のホームは、混雑していて余計に空気は澱んでいく。間もなく到着した電車の中も人が溢れかえり、沈む気持ちに拍車をかける。
乗降客の波に押されて、今にも弾き出されそうになる腕を誰かに掴まれた。すぐに振り解こうと腕を辿ってみると有田さんが、むっとした顔で見下ろしていた。
「ぼーっとするな、邪魔だろ」
と言い放ち、腕を引いて車内へと乗り込んでいく。
あっという間に車内へと誘われ、偶然空いた席に放り込まれてしまった。有田さんは私の前に立ち、吊り革へと手を伸ばす。
不機嫌そうな顔で視線は窓の外へと向いているけれど、圧迫感に耐えられなくなる。
「すみませんでした、ちゃんと確認したんですが、本当に申し訳ありません」
「謝らなくていい、戻ったらすぐに案を纏めろ、この仕事が終わるまで他の仕事は免除する」
「ですが、益子課長から頼みたい仕事があると言われています」
「わかった、私から話しておく」
小さく吐いて、有田さんは再び窓の外へと向いてしまった。