思いがけずロマンチック

こんな調子では有田さんをゲットするなんて無理かもしれない。何にもアクションを起こさないうちに、気持ちが萎えてしまいそうだ。


どうしたものかと考えながらの残業中。
嫌な気配を感じて振り向いたら、モニター越しに益子課長の顏がちらりと見えた。目を合わすまいとすぐに逸らしたけれど時すでに遅く、にやりと笑いかけられてしまった。


「唐津さん、ちょっと相談したいことがあるんだけど……いい?」


『嫌です』と即答したいのを我慢。
それよりも有田さんから聞いてないのだろうか、私は企画の練り直しで忙しいのだと。


「何ですか?」


手短に済ませてよ、と意味を込めて早口で答えた。すると益子課長は辺りを見渡してから、うんと前のめりの姿勢で近づいてくる。


「忙しいところ悪いけど、新経営責任者さんの歓迎会……というか懇親会を開こうという話が出てるんだ」


益子課長は有田さんのことを名前では呼ばない。さすがに本人を前にした時は『有田さん』と呼んでいるけれど、私や誰かに話す時はいつも新経営責任者と呼んでいる。何故そう呼ぶのか気にならないはずはないけれど、聞くのも面倒だからスルーに限る。



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