思いがけずロマンチック

有田さんが居なくなった後、ひとりで新企画の説明をした。正式な企画書はないから、手元に用意しておいた資料を使いながら。

ひと通りの説明を終えてもまだ、有田さんは戻ってこない。


「ありがとう、唐津さんなら安心して任せられるよ、きっと素晴らしいものになるね」


笠間さんは満足そうに目を細める。

『安心して……』と言ってくれたけれど、とても本心とは思えない。だって、二度も同じような失敗をしてしまったんだから。
たぶん笠間さんも呆れているに違いない。


「本当に申し訳ありませんでした、現地では絶対に失敗のないように注意を徹底いたします」


頭を下げると涙が溢れ出てしまいそう。
もう絶対に失敗はできない。絶対に成功させなきゃいけない。何度も何度も自分に言い聞かせた。


「唐津さん、もういいよ。唐津さんが頑張ってくれているのはよくわかっているから」

「すみません、ありがとうございます」

「気にしないで。有田さん……、行動力があって頼りになる人だね」

「はい、今回の企画も有田さんから指摘とアドバイスをもらったんです、私の最後の仕事だから気を遣ってくれたのかもしれません」

「え? 唐津さん辞めるの?」


笠間さんが驚いて声を上げたから、私まで驚いてしまう。まだ笠間さんには話していなかったのかもしれないと思い起こしながら、大きく首を振って否定した。

< 84 / 228 >

この作品をシェア

pagetop