思いがけずロマンチック
笠間さんの店を出て荒ぶる風雨の中、駅前まで急いで歩いてきた。傘をさしていても肩は濡れて、足元はびしょ濡れだ。
しかも、かなり時間は遅くなってしまった。
これから会社に戻って片付けて、約束の食事はどこへ行けば……と考えを巡らせていると、有田さんが腕時計へと視線を落とす。
「何か食べたいものはあるか? さっき戻った時に直帰すると届けてきた」
意外な言葉に驚いた。そんな気遣いをしてくれるなんて思わなかったから。どちらかというと、たかが食事ぐらいと後回しにされると思っていた。
「ありがとうございます、私は何でもいいです、人目につかないところなら……」
有田さんをゲットする前に、社内の誰かに見つかってしまっては厄介だ。変な噂を立てられたりしたら、規則を撤回してもらうことも叶わなくなる。
「わかった、行こうか」
と答えて、有田さんは歩き出した。
駅前からタクシーに乗り込んで、有田さんが運転手に告げたのは港に建つホテル。どうしてホテルなのか、私は食事に行こうと言ったはずなのに。
まさか勘違いしてる?
有田さんが何を考えているの理解できないまま、尋ねることもできないまま。風雨が強まる中、タクシーは港のホテルに到着した。