ルルー工房の月曜の午後
ⅴ.
ⅴ.
「わ……っ!?」
硬いものを蹴った感触がして、短く声を上げたときには遅かった。
ベルは体が傾いでいくのを感じながら、とっさに目をつむる。
――転ぶ。
一拍遅れてそう思ったとき、誰かの手が、強い力で後ろからベルの肩を引いた。
急に引き戻されて体勢を崩したベルは、そのまま誰かの胸に背中からぶつかる。
とりあえずおかげで転ばなくてすんだようだ、と、後ろを振り向くと、そこにいたのはエドガーだった。
「親方っ! すみません、ありがとうございました」
すぐに体を離して頭を下げると、
「気をつけろ」
とだけ言って、エドガーはすたすたと歩いていく。
ベルのわきを通り過ぎて、絵の具の調合をしているリュカの元へ。
火曜日の朝。
ジルの言ったとおり、今日この日からルルー工房は総出で、主祭壇の天井画にとりかかりはじめた。
昨日はルルー工房に、お得意様のパトロンから絵の依頼状を持った使いが来ると連絡があったから、リュカが留守番をしていたが、今日は工房を閉めてしまっている。
人数の少ない工房だから、いつもいつも人を留守番に割くわけにもいかないのだ。
「わ……っ!?」
硬いものを蹴った感触がして、短く声を上げたときには遅かった。
ベルは体が傾いでいくのを感じながら、とっさに目をつむる。
――転ぶ。
一拍遅れてそう思ったとき、誰かの手が、強い力で後ろからベルの肩を引いた。
急に引き戻されて体勢を崩したベルは、そのまま誰かの胸に背中からぶつかる。
とりあえずおかげで転ばなくてすんだようだ、と、後ろを振り向くと、そこにいたのはエドガーだった。
「親方っ! すみません、ありがとうございました」
すぐに体を離して頭を下げると、
「気をつけろ」
とだけ言って、エドガーはすたすたと歩いていく。
ベルのわきを通り過ぎて、絵の具の調合をしているリュカの元へ。
火曜日の朝。
ジルの言ったとおり、今日この日からルルー工房は総出で、主祭壇の天井画にとりかかりはじめた。
昨日はルルー工房に、お得意様のパトロンから絵の依頼状を持った使いが来ると連絡があったから、リュカが留守番をしていたが、今日は工房を閉めてしまっている。
人数の少ない工房だから、いつもいつも人を留守番に割くわけにもいかないのだ。