ルルー工房の月曜の午後
ⅰ.
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自分の足で歩くパリの街は、なんだか知らない街みたいだ。


まるで田舎者のようにきょろきょろと辺りを見渡しながら、ベルはそう思った。


いつも馬車の中から見ていた景色はどこかよそよそしかった。

自分と関係のないもののように流れていくそれは、どれだけ望んでも触れることはできなかった。


けれど、それも昨日までのこと。

今は違う。

今は自分も街の一部として、歩いて、立ち止まって、触れて、言葉を交わすことができる。


おぼろげな記憶を頼りに、目指すのはベルシー通り。

以前馬車でそこを通ったときに、絵画工房をいくつか見た記憶がある。


その中でも最も大きなレイエ工房に弟子入りできれば上々。

それが無理でも、たくさんある工房のうちのどれかには弟子入りできるだろう。


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