ルルー工房の月曜の午後
ⅷ.
ⅷ.


「ベル、来い」



エドガーに言われて絵の具の片付けをしていたベルは、短く呼ばれて手を止めた。



呼んだのはジルの声。


けれど、いつとベルに何かを言い付けるときの声音より、いくぶんか優しい。



振り返ると、主祭壇の円蓋の下でエドガーが手招きをしている。


リュカとジルがその隣で、ベルを見ていた。



ジルがにっと笑って、真上の円蓋を指す。



まさか。



心臓が早鐘を打つ。


いてもたってもいられず、ベルは転がるようにして三人の元へ走っていく。



日曜日の昼下がり。



主祭壇の前で天井を見上げて、ベルは小さな小さなため息をひとつこぼした。



――それは、あまりに荘厳な終末の世界。



円蓋の淵をなぞるように、ぐるりと囲むのは地獄の炎。


泣き叫ぶ罪深き人たちはもつれあい、天使たちに追い落とされながらも、懇願と渇望のまなざしを一様に天井の中央へ向ける。



神に選ばれ天上へ招かれた人々は歓喜と期待に頬を染め、ラッパを吹く天使たちと共に、眩い光のなかへ舞い上がる。



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