強引なカレの甘い束縛


だからといって、私たちは同期という関係を崩すことなく、私の家でふたりで過ごしていてもとくに何の変化もない時間を過ごしていた。

きっと私が陽太を好きなだけで、陽太は私のことを気の合う女友達として見ているだけだろうと納得していたし、それで良かったのに。

何故か突然大原部長のバーベキューに連れていかれ、社内では婚約者という扱いをされ、私を困らせる優しい言葉をこれでもかというほどくれる。

たぶん、世の中の女の子のほとんどが言われてみたいと思うだろう甘い言葉の大放出。

最近では照れるという言葉を知らないのかと思うくらい直球で攻めてくる。

『七瀬に今の生活を変える勇気をやる。住む場所が変わったり手元にある物が増えたり減ったりしても、七瀬が何かを失うわけじゃない。それに、過去の自分を責めるのはもうおしまいだ。七瀬は幸せ過ぎて笑えるし嬉しすぎて泣くこともできる。俺がそばにいるんだから当然だろ?』

額と額をこつんとしながらそんな甘い言葉を言うなんて、陽太はどこでそんなテクを身につけてきたんだろうと戸惑いながらも、言ってくれたことは素直に嬉しくて。

過去は過去として受け入れて、自分が長い間とじこもっていた場所から出ても大丈夫かもしれないと、感じた。

姉さんを傷つけた自分を、少しだけ、許してもいいのだろうかとも思った。





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