強引なカレの甘い束縛

学生生活を終え、就職しても尚、その不安はつきまとっている。

姉さんの嫁ぎ先である音羽家の優しさにこれ以上甘えてはいけないと思いながらも、自立できない自分がもどかしい。

何度か今住まわせてもらっている家を出て、ちゃんと自立した暮らしを始めようとしたけれど、パソコンで新居を探そうと検索するたび心が乱れて頭が痛くなった。

それほどまでに私が今の家から離れられないのは、私が姉さんを傷つけてしまったことも大きい。

私が自立したいと願ったことで、姉さんの心と身体は大きな傷を負ったのだから。

それは私の心にも後悔という名の大きなしこりとなり、私を家に縛る理由となっている。

私が自由になろうとするたび、大切な人が傷つくのだ。

両親、そして、姉さん。

そんな私の過去のいくつかを、陽太は知っている。

五年近く、ふたりで親しくつきあっていれば、お互いのことに詳しくなるのも当然で、私が変化を嫌う理由も知っているはずなのに。

どうして今、私に家を出ろだとか、それに。

「大原部長のバーベキューに連れて行くなんて。それって、結婚するってことらしいし。一体どういうつもりなんだろう……。冗談には思えないんだけど」

目の前のパソコンの画面に並ぶ数字に向かってぶつぶつつぶやいていると。

「萩尾さん、少しいいですか?」

「え、え? あ、ごめんね何かな」

背後から聞こえた声に振り向くと、第三グループの元山君が立っていた。手にしているファイルを私に差出すと、不安げに口を開いた。




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