強引なカレの甘い束縛
私は陽太の目を見ながら、再び口を開いた。
「高台にあった公園を出てしばらく走ったんだけど、足が速い忍さんに追いつかれそうになって、近くの階段を慌てて駆けおりたら、途中で足がもつれてしまって。そのまま転げ落ちて。傾斜が急な三十段ほどの階段を一気に落ちたから、頭から血が出るし、体中痛むし、意識は飛んじゃうし。救急車で運ばれてそのまま入院しちゃった」
そのときの痛みを思い出さないよう、ははっと笑って気持ちを逸らした。
階段を転げ落ちているときの恐怖と痛みは今でも覚えている。
「しちゃったって、笑って言うことか? この額の傷はそのときにできた傷か?」
「あ、やっぱり目立つかな。かなり薄くなったと思ってたんだけどな」
額の傷を撫でてくれる陽太の手の動きがくすぐったくて、思わず体を揺らした。
「頭の傷って、大丈夫なのか? 気を失ったんだろ?」
陽太の心配げな声に、私は何度か頷いた。
「うん。さすがに全身打撲で体のダメージは大きかったし、脳震盪を起こしたから三日間入院して検査三昧だったけど、大丈夫だった」
「そうか、良かった」
「ありがと。……だけどね、階段を転げ落ちて気を失う寸前に姉さんが私の名前を叫ぶ声を聞いて、どうにか視線をあげたら、涙で顔をぐちゃぐちゃにした姉さんが階段を駆けおりていて、それを見たら、なんだか申し訳なくて」
「階段を転げ落ちる七瀬を見たら、俺だって泣いて叫んでると思うぞ」
陽太は「そんなこと想像もしたくない」と言いながら、私を抱きしめた。
「落ち方が悪かったら、死んでもおかしくないんだぞ。頼むから、これからはそんな無茶はするな」
ふうっと大きな息を吐いた陽太。