強引なカレの甘い束縛


「七瀬が最高学府の出身だと知って、驚いたのは俺だけじゃないはずだ。女性初の取締役も、望めば狙えるのに、転勤のない事務職採用にこだわってるし。仲がよくなるにつれて、俺は忍さんとも個人的に親しくさせてもらって、まあ。かなり前から、七瀬の過去については知っていたんだ」

「……過去って、あの事故のことも?」

「そう。子どもの頃のご両親との関係も、お姉さんが七瀬を守ってくれていたことも、忍さんから詳しく聞いてるんだ」

「嘘……」

「嘘じゃない。七瀬が小学校の頃、参観日に来てくれないご両親に怒って、製作中の絵に絵具をぶちまけたのも聞いてる。ご両親はそのことを怒らずに七瀬を抱きしめて、謝ったことも」

「どうして、そこまで」

陽太の言葉が信じられなくて、私は目の前にある瞳を力なく見つめた。

足に力が入らず、倒れそうになる私の肩を強い力で支えてくれる。

「七瀬に惚れてる俺の気持ちに、忍さんが誰よりも早く気づいてくれたんだ。お姉さんをとことん愛してる忍さんだから、俺が七瀬を愛してることをすぐに見抜いたって、笑われたけどな」

ははっと小さく笑う陽太は、少し照れくさそうだ。

私に惚れてるだとか、愛してるだとか、そんな恥ずかしい想いを平気で口にする陽太に、私は照れる気持ちを隠すように睨んだ。

けれど、陽太は嬉しそうな笑顔でそれに答え、合わさった額をぐりぐりと押し付けた。




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