強引なカレの甘い束縛
稲生さんと元山君を見れば、私と違い、大原部長の言葉をちゃんと理解しているような表情をしている。
元山君は唇をかみしめ大きく頷くと。
「が、頑張ります」
強い気持ちを口にした。
何を頑張るんだろう。
稲生さんも、胸元で両手を合わせ、大きな笑顔を浮かべている。
「やっぱり、私、講習会の参加を続けて勉強します。そして、何があってもそれを柔軟に受け止められるように、知識を増やしておきます」
力強い言葉に、大原部長はにやりと口元をあげた。
「そんなに力まなくてもいいが、期待してるから、頑張ってくれ」
「はいっ」
……何を?
ふたりは何を頑張るのか、ちっともわからない。
稲生さんと元山君の顔を交互に見ながら首をかしげていると、大原部長は私の手元にも一枚の紙を差し出した。
「あ、あの?」
「萩尾さんには、来週からしばらく秘書課に行ってもらうことにした。そこにおおまかな段取りが書いてあるから確認しておいてくれ」
「え、秘書課、ですか?」
慌てて手元の用紙に視線を落とせば、大原部長経由私宛の人事部からの要件依頼書だった。