強引なカレの甘い束縛
ざっと目を通せば、来週の初めから期限を切らず、私は派遣要員として秘書課に異動すると書かれている。
思いがけない内容に驚いた私は、じっとそれを見つめ、どきどきする鼓動をどうにかやり過ごそうと息を吐いた。
「秘書課には今、四人の女性がいるんだが、ひとりが外交官の男性と結婚して、海外に行くことになったから退職。そしてひとりが出産間近だからしばらく休職することになってるんだ。というわけで、急遽助っ人が必要ってことで、萩尾さんが指名されたんだ」
「し、指名?」
明らかにそのことを喜んでいるとわかる大原部長の声と表情に違和感を覚えつつ、だからといってどう応えればいいのかもわからない。
「秘書課の課長もそうだが、女性たち四人の希望でもあるんだ。萩尾さんが欲しいって満場一致で決まって、秘書課を管轄する人事部長からの正式な依頼もきているから、うーん、残念だけど、行ってもらうしかないね」
さらりと言ってのける大原部長の顔をじっと見ながらその言葉が冗談だと思える何かを探そうとしても、どこにもそんなものは見つけられない。
この五年間、私の仕事ぶりを誉め、私の淹れるお茶をおいしいと言っては満足げな声をあげていたのに。
私が大原部長の元を離れて別の部署に移ることに寂しさを感じないのだろうか。