強引なカレの甘い束縛
たとえ私の仕事ぶりが評価され、秘書課の総意からの指名だとしても、私には無理だ。
「あ、あの、大原部長、私は……」
自信がありませんと言って、断れるものなら断ろうと口を開いたとき、隣に座っている稲生さんが、この場にふさわしくない大きな声をあげた。
「見てください、ここ。萩尾さんと一緒に仕事ができることを、秘書課全員で楽しみにしております。って書いてあります。わー、期待されてるんですね。秘書課だけでなく、営業部も萩尾さんを欲しがってるって聞いたことがありますけど、大原部長、どうなんですか?」
「まあ、そんな話を持ち込まれたことはあるが、萩尾さんを手放す覚悟が俺にもできてなかったから、今までは断っていたんだ」
「え、じゃあ、今は覚悟ができたと……」
「泣く泣く、って感じだけどな。俺のことを理解して仕事のサポートをしてくれる部下にめぐりあえる機会はなかなか……俺の好みのお茶をタイミングよく用意してくれるし……って、これは仕事とは関係ないか。どにかく、萩尾さんのキャリアにとって悪くない話だと思うから、がんばれ」
「そ、そう言われても……」
大原部長だけでなく、稲生さんも元山君も、私の異動の話を喜んでいるように見える。
私がシステム開発部からいなくなることがそんなに嬉しいのかと寂しくなる。
そんな私の感情が顔に出たのか、稲生さんは少し焦ったように口を開いた。
「別に、萩尾さんがいなくなればいいとは思ってませんよ。せっかく親しくなれたのに、寂しいです。だけど、萩尾さんが優秀だっていうことは誰でもわかってることだし、ステップアップのためには秘書課への異動、いいと思います」
私の顔を覗き込むように話し、必死な様子を見せる稲生さん。
その慌てぶりに、思わずくすりと笑ってしまう。