強引なカレの甘い束縛
「あー、あの日ね。たまたま陽太君が忍さんの会社の近くに仕事で行って、飲みに誘ったらしいのよ。だけど、忍さんは唯香の顔が早く見たいからってうちに連れて帰ってきたの。公香のときもそうだったけど、ほんとにもう、子どもが大好きなパパなの」
呆れたような姉さんの声。忍さんのその時の様子が想像できておかしい。
子煩悩そのものの忍さんのことだ、飲みに行くよりも家に帰って唯香と公香の顔を見たかったに違いない。
「陽太君がね、そのときにカチューシャをプレゼントしてくれるって約束してくれたから、公香頑張ったの」
「そっか。公香はいっしょうけんめい練習して、跳べるようになったご褒美に買ってもらったんだね」
私の言葉に、公香は大きく頷いた。
「陽太君は、公香のことが大切なんだって。だから、ちゃんと約束を守ってくれたの」
姉さんはそのことを知っていたのか「陽太君、ほんとに優しいわね」とからかうような視線を私に向けた。
すると、公香がその言葉に反応した。
「陽太君、ほんとに、優しい……」
貼り付けていた笑顔を一瞬崩し、陽太の優しさにすがるように、公香はつぶやく。
本当は、いつでも大好きなお母さんと過ごしたいはずなのに、きっと我慢ばかりしているんだろう。その責任は私にもあると感じて、落ち込む。
「今日もなわとび持ってきたらよかったな」
公香の言葉に、私は笑顔で頷いて見せた。
「陽太君、二重跳びも上手なんだよ」
「そっか。ななちゃんもできるから、今度教えてあげる」
「うん。後ろ跳びも教えてね」
「いいよー。幼稚園で一番上手に跳べるように頑張ろう」
公香とふたり、顔を見合わせて笑う。
姉さんはそんな私たちを見て優しく笑っている。