強引なカレの甘い束縛
そう、七瀬との五年の思い出は、今日この日を迎えるためのエピローグのようなものだ。
俺には想像できない未来のなにもかもを、すべて受け止めて、ひたすら七瀬を愛する。
「きゃっ」
心の中で誓いをたて、口元だけで笑みを作ったそのとき、隣を歩いていた七瀬が躓いた。
「お約束だな」
俺に倒れ込んできた七瀬の体を支えて軽くそう言えば、上目使いで七瀬が俺を見る。
「やっぱり、歩きづらい。ミニ丈のドレスでもよかったかな」
照れくさそうにつぶやき、七瀬はぎこちない動きで体勢を整える。
青山さんが七瀬の衣装をきれいに直ししながら思い出したように口を開いた。
「以前、神田商事のご長男の披露宴を担当させていただいたんですけど、そのとき、新婦様がつまづいたんですよ。お色直しを何度もされたので、お疲れのようで」
肩を震わせ、楽しげに言葉を続ける。
「新郎様が新婦様をお姫様抱っこをして会場に入場されて。あの熱々ぶりは、ホテルの従業員の間でも時々話題になります」
「お姫様抱っこ……」
驚いた声の七瀬は、慌てて俺を見て、首を横に振る。
……俺もお姫様抱っこをしようと思ったのを、見抜かれたようだ。
そうか、やっぱり照れ屋の七瀬は、お姫様抱っこなんて嫌なんだろうな。
「だけど、ミニ丈だったらつまずくこともなかったかな。ちょっと残念」
話題を変えるように話す七瀬。
俺は、ミニ丈の七瀬を想像し、一瞬で気分が悪くなった。
そして、その気持ちを隠すことなく荒い声をあげた。
「ミニ丈なんて、無理に決まってるだろ。その綺麗な足を見るのは俺だけで十分」
そう、十分だ。
できれば綺麗な顔も温かな声も、俺ひとりだけのものにしたいのに。
三百人もの目に、これから二時間以上の長い時間、この綺麗な七瀬を晒さないといけないとは、それはまるで。
「拷問だな……」