強引なカレの甘い束縛


うーん、と心の中で声をあげながら考えていると。

「そろそろその手を離してやったらどうだ? そこまで必死でつかまえなくても逃げないだろ」

山内さんが呆れながら陽太にそう声をかけてくれた。

そして、そのまま私の手を取り、陽太の手から離してくれた。

掴まれている間は早く離してほしくてたまらなかったのに、いざ離れてしまうと頼りない気持ちになる。

「大原部長が、いよいよ春川も腹をくくって萩尾さんを連れて来たんだなって楽しみにしてるぞ。早く紹介しろよ」

「楽しみって……は? 薫さんも一緒にこっち見てるし、笑ってるし」

陽太は諦めた声とともに立ち上がると、山内さんの手から私の手を奪い返し、強く握りしめた。

そして強引に私を立ち上がらせた。

不思議とそれが嬉しくて、私も自然に握り返した。

まるで恋人同士のようなやり取りだと感じて視線を動かしてみると、何も言うことはないとでもいうように表情を緩めた陽太がいた。

これって、自然なことなのかと。

思わず誤解してしまいそうな甘い一瞬。

私の体はくらり、揺れた。

ビールは飲んでいないのに、ちょうど酔っぱらっていい気分になったときのような、感じだ。 



< 61 / 376 >

この作品をシェア

pagetop