強引なカレの甘い束縛


これまでの私は、典型的な片思いに苦しみながら、その苦しみから逃げることもせず、かといって陽太への想いを成就させるつもりもなく。

今こうして陽太と一緒に買い物にでかけ、ふたりで一緒に食事をしたり笑いあう時間を持つだけでいいと、そう思っていた。

そう、今のままで十分だと言い聞かせていた。

「大原部長の奥様って、きれいな人だったね」

「そうだな。俺も初めて紹介された時にあまりにもきれいだからぼーっとしてしまったな」

「へえ。薫さんみたいな女性が好みなんだ」

「妬くな妬くな。誰が見ても見惚れるほどきれいな人なんだから仕方がない。だけど、見惚れるっていうのと好みっていうのは違うぞ。俺の好みは、うーん、ま、今はまだ俺の胸にしまっておくか」

くつくつ笑いながら肩を震わせる陽太のあとをついて歩く。

大原部長の家に連れて行かれた事実と今の言葉を合わせて考えると、途端に照れて体が熱くなる。




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