強引なカレの甘い束縛
「突然、すぎるのよね」
今日一日の出来事を振り返り、くすりと笑った。
カートを押しながら慣れた売場を迷いなく歩いている陽太の背中を見ていると、普段と変わらない様子にむかついてくる。
私ひとりがあたふたと感情を上下させているようで悔しいけれど、その背中の後ろを歩くだけで安心できることに気づけば、不思議と心地いい。
「調味料はまだあったよな……」
ぶつぶつ声にする陽太。
こうして当然のようにふたりで夕食の食材を買い、ふたりで調理して食べる。
それはいつものことだ。
「いつまでも、こうしていられるといいのに」
心にふと浮かんだ想いが口を突いて出た。
これまで何度も願ったことを、なぜか声に出してしまった。
案の定、陽太は私の声に振り返ると、訝しげな視線を私に向けた。
「あ、なんでもない」
私は焦りを隠せないままそう言って、ひとりでさっさと卵売場へと足を向けた。
今口にした言葉に嘘はないけれど、その気持ちを陽太に押し付けるわけにはいかない。きっと、陽太と近い距離で過ごせるのもあとわずか。
きっと、陽太が招集されたプロジェクトが完結すれば早々に異動になるはずだから。
この先もずっと一緒にいられればいいなんて願いを陽太に押し付けるわけにはいかない。