強引なカレの甘い束縛
「忍さんの家族が七瀬をこの部屋で守りながら、七瀬が穏やかに過ごせるように気を配っているのはちゃんとわかってるけど。そろそろ、そんな現状を変えて、俺がいる場所に降りてこないか?」
もともと静かだった周囲が、いっそう音を失ったように鎮まっていく。
ガラス窓の向こうに見える風景もすべてひっそりと目に映る。
さっきまで川沿いのマラソンコースを走っていた人もいなくなり、今は誰も見えない。風にゆったりと揺れていた木々の葉も、何故かその動きを止め、写真でその姿を見せられているような景色が目に入った。
「陽太のいる場所」
しんと静まり返る時間をしばらく過ごしたあとにようやく私の口から出た声は、自分のものじゃないようにか細くて、震えている。
今までそんなこと言ったことなかったのに。
どうして、今。
それも、お互いの気持ちを通わせようとしている最中に。
陽太のことを私が好きだと口にできる喜びを感じ始めたばかりなのに。
それに、陽太も私のことを好きだといってくれたばかりなのに。