ひみつの琴子さん【修正 & side story完結】
「河田さん、こっち」

声の方を見ると、ハザードを点滅させた白いBMWから、藤枝さんが降りてきた。

「晩ごはん、行こっ。どうぞ」

助手席のドアを開けながら、私を座らせる。

「…はい」

私が返事をすると、ふわりと柔らかく微笑んだ。

スーーッと静かに車をスタートさせた藤枝さんは、

「お店、少し入り組んだとこなんだ。
河田さんは、苦手な食べ物はある?」


「とくにありません。でも、最近食欲がなくて、あまり食べられないかもしれません。
せっかく、連れて行ってくださるのに、すみません」

すまなさそうに言う私に、

「大丈夫。そう思って、量は少ないけど、元気が出そうな料理をお願いしたから」

わざわざ、私のために?

「…ありがとうございます」





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