オフィス・ラブ #another code
実際、目をつけられたのだった。
といっても、当初新庄が危ぶんでいたような意味ではなかった。
突然届いたメールを前に、新庄は考えこんだ。
差出人に心当たりがない。
内容は、マーケ関係の若手で集い親交を深めましょうという、まあいきなりではあるが、特に問題のなさそうなもので。
添付の名簿には、新庄も知る同期や年代の近い社員もいて、真実味もあった。
けれど、自分にこれが送られてくる理由がわからず、新庄違いじゃないかとも思ったが、マーケに同じ苗字の社員はいない。
記憶をたどろうと差出人の名前をつぶやくと、隣の楠田が反応した。
「それ、参謀じゃないか」
「参謀?」
なんだその、たいそうなあだ名は。
楠田が、メール? と新庄の画面を指したので、うなずいてデスクの前をゆずった。
「次長にべったりの中堅社員だよ。意味もない部署をひとつもらって、主管をしてるはずだ」
「じゃあ、このメールは」
「書いてないけど、行けば次長がいて、俺の傘下に入れくらいのことは言うだろうね」
危なかった。
そもそもこんな曖昧な目的の集まりに行く気はさらさらなかったが、へたな断りかたをしていたら、それはそれでまずいところだった。
楠田が加倉井を呼んだ。
何もそこまで、とは思ったが、後から思えばこの楠田の判断は、とんでもなく正しかったのだ。
「お前、女にもてるだけじゃ足りないってのか」
「俺は何もしてませんし、そもそも女にだってもてません」
メールを読むなりあきれた声を出した加倉井に、思わず反論する。