オフィス・ラブ #another code
実際新庄は、相手に不自由したことはないものの、これはいわゆる「もてる」とは違うのではないかと思っていた。

なんというか「だめならいいや」くらいの気持ちで、けど、とりあえずトライしてみたくなるような。

試しがいはあるけど高くはないハードルで、しかも後を引かなそう、というだけの存在なんじゃないかと自分をとらえていた。


以前、堤とそういう話をした時「お前、意外と自己客観性あるね」と言われたので、当たらずとも遠からずなんだろう。

まあ、そんなことは、それこそどうでもよく。



「マネージャークラスからは完全にシカトだからな。今度は若手か」

「先日のグループミーティングで、新庄がリストに載っちゃったんでしょうね」

「ちょっとはねっかえりくらいのほうが、落としがいあるもんなあ」



背後の会話を、居心地悪く聞く。

そんなつもりではなかったが、あのていどで目をつけられるのなら、どのみち時間の問題だっただろうという気がした。

名簿を見ると、ほぼ同年代全員に声がかかっているようだったし、おそらく元から候補にはなっていたんだろう。



「グループ長にも話をしておく。返信には俺と彼をbccに入れろ。内容は慎重にな」

「はい」



ただでさえ激務の加倉井に加え、グループ長にまで手間をかけることになり、申し訳ない思いだった。

かろうじて年次的に難を逃れた楠田も、何かあったら言えよ、と心配してくれる。


失礼にならず、けれど隙のない断り文句を考え、少し迷ったという演出のため、数時間待ってから送信すると。

加倉井から「100点」という返信が来た。



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