オフィス・ラブ #another code
『堤さんが、午後休をくださいました…。』
声が聞こえてきそうなメールに、つい笑う。
勘のいい上司に夕方の予定を察知され、いじめのように無理やり休みをとらされたんだろう。
本来であれば比較的ヒマな2月に、部の命運を賭けたコンペが行われたため、年始以降はまともに休めていないはずだ。
それもあって、堤がなかば職権をふりかざして休ませたのであろうことは想像がついた。
けれど彼女の立場からすれば、また読まれたという恥ずかしさと悔しさで、さぞ居場所がないに違いない。
不本意そうな、すねたような顔が思い浮かび、煙草を噛む口がゆるんだ。
早めに大阪に入って、夕食をつくって待つという彼女に、楽しみだと正直に返信をした。
新庄も今日偶然、上長の都合により打ち合わせがひとつキャンセルになっていて。
そのぶん業務をくりあげれば、考えていたよりは早く帰れそうだった。
この空模様なら、明日も晴れるだろう。
一日ふたりで、出かけよう。
最近すっかり気に入ったこの屋上で、微妙に顔見知りになりつつある他部署の喫煙者と挨拶を交わしながら。
彼女に会うのを待ちきれない思いでいる自分を、やけに微笑ましく感じた。