オフィス・ラブ #another code
恵利が来ることを考えて、向こうの住居は1DKを選択した。
ただ、候補だった1Kも1DKも、駐車設備はない。
便利な場所だし、当然だと頭ではわかっていながら、愛車との別離に思わずため息をついた。
今日、人事部から届いた入居予定日を恵利にメールしながら。
先日の、考えられないような自分の所業を思い返して、新庄は煙草を噛んだ。
出向の話を告げた時。
驚かれるか残念がられるかは覚悟していたけれど、思いもよらない、不安に揺れる彼女の目を見た。
やめてくれ、と思った。
なんで、そんな目で見る。
どうして、何も言わない。
それまで、あえて深刻に考えないようにしてきた離ればなれになるという現実が、急に実体を伴ってふたりに襲いかかってきたようで、我にもなくうろたえ。
なかば無理やりに、彼女を抱いた。
初めてだった、あんなことは。
別に傷つけようと思ったわけじゃないけれど、何かに気持ちをぶつけたかったのは事実で。
どこか責めるような彼女の目を、まともに見る勇気もないままに、散々に抱いた。
お互い不安など、ないと思っていたのに。
だって、想いは一緒だろう?
なら、何も心配することはないはずだ。
なのに、彼女は揺れて。
自分も引きずられるように、足場を見失った。