オフィス・ラブ #another code
「結局、ユニット外に行くのは新庄さんだけですか」
そういうことらしい。
新庄は携帯を閉じてテーブルに置いた。
フットワークの軽い賀茂の声がけで、今回の騒動に巻きこまれた4名が飲み屋に集まっていた。
手前味噌だが、さすが新部署の立ちあげに呼ばれた人間たち、という顔ぶれで。
新庄は、彼らとつながりができたのなら、今回の騒ぎも悪いことばかりじゃないなと思った。
「まあ、次長も気の毒な人だよね」
「人生、退屈で仕方ないでしょうね」
賀茂以外は、新庄より少し上である。
誰もが仕事を愛してやまないため、そんな感想が飛び交った。
本当に気の毒だ、ああいう形でしか社会とかかわれないなんて。
偶然にも全員が喫煙者だったので、気がねなくあたりを真っ白に染めながら飲める。
「新庄君だけ、さすがに不当に思えるな」
「めぐりあわせが悪かったんでしょう」
「達観してるなあ」
そんなんじゃないです、と苦笑しながら、実際新庄はそんな心境に至っていた。
起こるべくして起こったとまでは悟れないけれど、まあこういうこともあるんだろう、生きていれば。
よくよく考えてみると、いつか戻ってこられる限りは、彼女と車を置いていくこと以外マイナスはない。
ただ、行きっぱなしの可能性と、そのふたつのマイナスが、あまりに大きいだけだ。
携帯が震え、彼女からの返信を知らせた。
了解しました、という短いメールは、彼女の感情を何も伝えてはくれず、微妙に新庄を困らせた。
自分たちは、いつもこうだった。
元が仕事上の関係だったせいか、連絡はいつも、端的で簡潔だ。
特にそれを不自由に感じたことはなかったが、こういう事態になってみると、向こうの様子を知ることのできない歯がゆさが襲った。