オフィス・ラブ #another code
「牛肉、届いた?」
届いた。
久しぶりのオフを狙ったかのように、日曜の朝一番に。
大阪の部屋でぐっすりと寝ていた新庄は、しつこいチャイムに起こされ。
目覚めきらない頭で冷凍便を受けとり、それが先日の披露宴二次会の景品だと気がついたのは、もう一度寝て起きた後だった。
それはいいんだが。
新庄はキーボードを叩く手をとめ、かつての同僚に椅子ごと向き直った。
「堤、お前」
なんでここにいるんだ?
「出張だよ、大阪支社に。お前だってやってたろ」
「顔出すなら、連絡入れろよ」
それじゃ驚く顔を見られないじゃん、と悪びれずに笑うその男は。
もう妻帯者なんだなあ、と妙に新庄をしみじみさせた。
屋上のフェンスに寄りかかり、肩越しに景色を眺めながら、ここ、いいねと気持ちよさそうに煙草をくゆらせている。
つい先月末に挙式したばかりのこの男とのつきあいは、いつの間にか、もう片手で数えられないくらいになっていた。