落日の楽園(エデン)
 舞は抑えた声で彼女に訊いた。

「それ……ほんとなの?」

「な、なによ、あんた。人の不幸を利用して、春日くんに取り入ろうっていうの?」

「取り入ろうとしてたのは、あんたたちでしょ!?

 私はただ、それは本当なのかって、聞いてんのよ!」

 ぐいっと舞はその腕を捻りあげた。

 女生徒は痛がって顔をしかめる。

 周りの女達が青くなって止めに入るが、舞の迫力に腰が引けていた。

「ちょ、ちょっと、放しなさいよ! 腕、白くなっちゃってるじゃないの!」

 駄目だ。こんな奴らにかまってられない。

 舞は、ぱっと手を放した。

 解放された女生徒はその場に座り込む。

 低い声で舞は訊いた。

「……春日は?」

「し、知らないわよ。私たちも捜してるんだから」

 蒼褪めた舞の態度に、彼女たちも、さすがにおかしいと思い始めたらしく、きびすを返して、昇降口へと向かう舞の後ろで、ひそひそと囁き合っていた。
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