落日の楽園(エデン)
 


 
『お母さぁん、舞がぶったあっ』

『男の癖に、ぴーぴーぴーぴー泣くんじゃないのっ』

 春日介弥(かいや)は舞の同い年の従姉弟だった。

 子供の頃は、女の子の方が成長が早い。
 舞の方が身体も大きくて力も強かった。

 そして、今同様、気性も激しかった。

 だから、小さな介弥はしょっちゅう舞に泣かされていた―

『あんたみたいな情けない奴、誰もお嫁になんか来てくれないわよ!』

 そう言う舞に、介弥は強く言い返した。

『いいもん! 僕は舞をお嫁さんにするんだから。そうしたら舞は僕に逆らえないだろ!』

 その介弥の口から出たとも思えない強い言葉に、舞はびくりとした。

 そして、気づいたらまた殴っていた。

『わあん、お母さん。舞がぶったあ』


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