落日の楽園(エデン)
 



「あー、まいった」
とちょっと筋を違えた気がする首を捻りながら、春日は夜の境内を歩いていた。

 振り返ると、また何事か子どものような言い合いをしているらしい二人の影が見える。

 くすりと笑みを漏らした。

 自分は―

 自分たちの叶えられなかった夢を彼らに託しているのだろうか。

 春日は透子の影を見ながら、額の中央に手をやる。

「でもね、透子さん。

 僕― 貴女のことだけが見えないんです」

 そう呟くと、離れに背を向け、黒い林に向かい、歩き出した。




                     了


< 65 / 65 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:23

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました

総文字数/121,996

恋愛(ラブコメ)521ページ

表紙を見る
冷たい舌

総文字数/161,359

ファンタジー396ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop