今、鐘が鳴る
「恭匡さんに感謝なさい。」
母は私からそっと離れて、そう言った。
「そうですね。本当に。私には優しくないけれど、実はちゃんと考えてくださってるんですね。でも、内弟子って、書以外もしなきゃいけないのかしら?」
私の言葉に、母は眉をひそめた。
「……本当に、あなたは……。そうではなくて、碧生くんを紹介してくださったことを、よ。あなたを一生お姫さま扱いしてくださる殿方、あの子しかいないと思うわよ。」
「碧生くんの話ですか?彼、いいですよね。自分で何でもできちゃうから、他人に相談せずに進めちゃうところが欠点だけど、それも自分の利益のためじゃなくて人のためだったりするから。……あまり自我の強い女の子じゃ喧嘩が絶えないでしょうけど、百合子さんは素直で受け身だからピッタリじゃないですか?」
電話を終えて戻ってきた知織さんの言葉は、とても的確なような気がした。
母も満足そうにうなずいて、知織さんに赤ちゃんを返した。
「旦那様、落ち着かれましたか?」
「ダメですね。嘘つきたくない、そうです。」
一条さんって……困った御仁?
「嘘も方便でしょうに。」
母の言葉に知織さんもその時はうなずいたけれど、京都駅に到着する直前に、知織さんはボソッと言った。
「仕方ないですね。ああいう人ってわかって結婚したんだし。普通の大学生、あきらめます。この子と暎さんのほうが大事ですもんね。」
覚悟を決めた知織さんは、とても美しく見えた。
翌日、碧生くんがやってきた。
「やっと独り占めできるぅ。」
碧生くんが両親に挨拶し終えるのを待って、私は碧生くんの腕にしがみついて頬を擦り付けた。
IDEA(イデア)の一条さんがラジオで失言した件は、意外なところから完全にバレてしまった。
テレビカメラを連れたレポーターが一条さんの実家に押しかけたところ、義理のお姉さんがしれっと「お嫁さんは現役東大生」と言ってしまったらしい。
「一般人」で済ます予定が、無駄に騒がれて、既にお嫁さん探しが始まっているそうだ。
「4月から大変だ。知織も休学したほうがいいかもね。」
……も?
碧生(あおい)くんは、少しスピードの落ちた私を気遣って、私の荷物を持ってくれながら、さらりとそう言った。
どうやら、碧生くんの中では、私は休学することが決定しているらしい。
まあ、いいけど……いいよね?もう。
母は私からそっと離れて、そう言った。
「そうですね。本当に。私には優しくないけれど、実はちゃんと考えてくださってるんですね。でも、内弟子って、書以外もしなきゃいけないのかしら?」
私の言葉に、母は眉をひそめた。
「……本当に、あなたは……。そうではなくて、碧生くんを紹介してくださったことを、よ。あなたを一生お姫さま扱いしてくださる殿方、あの子しかいないと思うわよ。」
「碧生くんの話ですか?彼、いいですよね。自分で何でもできちゃうから、他人に相談せずに進めちゃうところが欠点だけど、それも自分の利益のためじゃなくて人のためだったりするから。……あまり自我の強い女の子じゃ喧嘩が絶えないでしょうけど、百合子さんは素直で受け身だからピッタリじゃないですか?」
電話を終えて戻ってきた知織さんの言葉は、とても的確なような気がした。
母も満足そうにうなずいて、知織さんに赤ちゃんを返した。
「旦那様、落ち着かれましたか?」
「ダメですね。嘘つきたくない、そうです。」
一条さんって……困った御仁?
「嘘も方便でしょうに。」
母の言葉に知織さんもその時はうなずいたけれど、京都駅に到着する直前に、知織さんはボソッと言った。
「仕方ないですね。ああいう人ってわかって結婚したんだし。普通の大学生、あきらめます。この子と暎さんのほうが大事ですもんね。」
覚悟を決めた知織さんは、とても美しく見えた。
翌日、碧生くんがやってきた。
「やっと独り占めできるぅ。」
碧生くんが両親に挨拶し終えるのを待って、私は碧生くんの腕にしがみついて頬を擦り付けた。
IDEA(イデア)の一条さんがラジオで失言した件は、意外なところから完全にバレてしまった。
テレビカメラを連れたレポーターが一条さんの実家に押しかけたところ、義理のお姉さんがしれっと「お嫁さんは現役東大生」と言ってしまったらしい。
「一般人」で済ます予定が、無駄に騒がれて、既にお嫁さん探しが始まっているそうだ。
「4月から大変だ。知織も休学したほうがいいかもね。」
……も?
碧生(あおい)くんは、少しスピードの落ちた私を気遣って、私の荷物を持ってくれながら、さらりとそう言った。
どうやら、碧生くんの中では、私は休学することが決定しているらしい。
まあ、いいけど……いいよね?もう。