今、鐘が鳴る
3月に入ってすぐ、碧生くんは私を連れて京都から出石へのウォーキングを決行した。
京都を出発して旧道を西へ北へと歩き続けて5日め。
かつて関所があったという国道脇の石碑に、碧生くんは抱きつかんばかりに感動していた。
「今日は峠を越えたから疲れたろ?明日には出石に着くからね。」
毎夜、碧生くんは私の足を揉みほぐしてくれた。
「大丈夫。靴と靴下がいいから?靴擦れもマメもできてないし。」
専門店で、1日40km以上歩いても大丈夫と言われて買ったウォーキングシューズは本当に楽だった。
春先とは言え、山道には雪も残っていた。
苛酷だろうと覚悟していた割には、楽しかった。
身体はクタクタになったし、ずいぶんと日焼けもしたけれど、ずっと碧生くんと2人きりというのがうれしかった。
私が願っていた通り、まさに24時間2人きりで一緒にいられる。
……もしかしたら喧嘩をすることもあるかも?と、多少は覚悟していたけれど杞憂だった。
むしろ私は碧生くんと一緒にいると、とても楽ちんだということがよくわかった。
大事にされているということは前からわかっていたけれど、碧生くん自身もすごーく疲れていても、私へのいたわりを最優先してくれるのね。
優しさが沁みるわ……。
それに、碧生くんのセレクトした旅館やお食事処、温泉はどこも気が利いててイイところだった。
予定通り6日めの午前中に出石に到着。
「こういう行程ならまた一緒に歩いてもいいわよ?」
足湯に浸かって休憩することも、ピクニックのように山中でおやつを食べることも、私には新鮮で楽しかった。
「そう?じゃあ、歩いてお伊勢参りに行ってみる?」
お伊勢さん!?
「遠そうだけど、どれぐらい距離あるの?」
恐る恐る聞いてみると、碧生くんは首をかしげた。
「いや、今回より近いはずだよ。150kmなかったと思う。鈴鹿越えがあるから苛酷だろうけど。」
「できたら鈴鹿は車で旧い八風街道を越えて欲しいんだけど……」
……けど……
「……うん、いいよ。碧生くんについてく。」
少し間を置いた私の言葉に、碧生くんは顔を輝かせた。
「今のって、ウォーキングとかドライブの話じゃないよね?」
ドキッとした。
そうね、そうよね。
そこまで意識してはいなかったけれど、そう言われればそんな気もする。
というか、そういうことにしておきたい気がする。
私は、従容とうなずきながら、こういうところが「素直」と勘違いされるのかもしれない、とぼんやり思った。
単に、物事をあまり深く考えずに、流されるだけなのだけど。
碧生くんは、そんな私をもう理解しているのだろう。
強引に、でも周囲に根回しもしっかりして、私をそばに置こうとしてくれている。
私もそれを望んでいるとは言え、ちゃんと実現可能にしてる碧生くんはすごいと思う。
たぶん碧生くんじゃなかったら、両親は許してくれなかっただろう。
……もちろん私には親の反対を押し切って自分の意志を貫くことなんてできるわけない。
京都を出発して旧道を西へ北へと歩き続けて5日め。
かつて関所があったという国道脇の石碑に、碧生くんは抱きつかんばかりに感動していた。
「今日は峠を越えたから疲れたろ?明日には出石に着くからね。」
毎夜、碧生くんは私の足を揉みほぐしてくれた。
「大丈夫。靴と靴下がいいから?靴擦れもマメもできてないし。」
専門店で、1日40km以上歩いても大丈夫と言われて買ったウォーキングシューズは本当に楽だった。
春先とは言え、山道には雪も残っていた。
苛酷だろうと覚悟していた割には、楽しかった。
身体はクタクタになったし、ずいぶんと日焼けもしたけれど、ずっと碧生くんと2人きりというのがうれしかった。
私が願っていた通り、まさに24時間2人きりで一緒にいられる。
……もしかしたら喧嘩をすることもあるかも?と、多少は覚悟していたけれど杞憂だった。
むしろ私は碧生くんと一緒にいると、とても楽ちんだということがよくわかった。
大事にされているということは前からわかっていたけれど、碧生くん自身もすごーく疲れていても、私へのいたわりを最優先してくれるのね。
優しさが沁みるわ……。
それに、碧生くんのセレクトした旅館やお食事処、温泉はどこも気が利いててイイところだった。
予定通り6日めの午前中に出石に到着。
「こういう行程ならまた一緒に歩いてもいいわよ?」
足湯に浸かって休憩することも、ピクニックのように山中でおやつを食べることも、私には新鮮で楽しかった。
「そう?じゃあ、歩いてお伊勢参りに行ってみる?」
お伊勢さん!?
「遠そうだけど、どれぐらい距離あるの?」
恐る恐る聞いてみると、碧生くんは首をかしげた。
「いや、今回より近いはずだよ。150kmなかったと思う。鈴鹿越えがあるから苛酷だろうけど。」
「できたら鈴鹿は車で旧い八風街道を越えて欲しいんだけど……」
……けど……
「……うん、いいよ。碧生くんについてく。」
少し間を置いた私の言葉に、碧生くんは顔を輝かせた。
「今のって、ウォーキングとかドライブの話じゃないよね?」
ドキッとした。
そうね、そうよね。
そこまで意識してはいなかったけれど、そう言われればそんな気もする。
というか、そういうことにしておきたい気がする。
私は、従容とうなずきながら、こういうところが「素直」と勘違いされるのかもしれない、とぼんやり思った。
単に、物事をあまり深く考えずに、流されるだけなのだけど。
碧生くんは、そんな私をもう理解しているのだろう。
強引に、でも周囲に根回しもしっかりして、私をそばに置こうとしてくれている。
私もそれを望んでいるとは言え、ちゃんと実現可能にしてる碧生くんはすごいと思う。
たぶん碧生くんじゃなかったら、両親は許してくれなかっただろう。
……もちろん私には親の反対を押し切って自分の意志を貫くことなんてできるわけない。