君を選んだから
開始時間になると、あちこちの取り引き先から派遣されて来た担当者たちと、グリーンピアの本部社員が一箇所に集められ、朝礼が始まった。

最初はエリアSVだか何だかのおじさんが挨拶をして、その後の細かい説明は匡史から。

軽く100人以上はいるであろう参加者たちを前に、堂々と話す匡史が妙に大人びて見えるから、何だか不思議な感覚に陥る。


あの匡史が、こんなに仕事ができるカッコ良い人になっちゃうなんて。

時は流れたんだな..........


しみじみとその光景に浸り、感慨にふけっていたら、匡史と急に目が合った。

真面目な説明をしているはずなのに、見つけたと言わんばかりに、何度もこっちをチラチラ見ながら、微かに笑みを浮かべている。


あぁ、やっぱり匡史は匡史だ。

そんなに見られたら、私もニヤけて来ちゃうからやめてって。


だけど、ちょっと嬉しくもある。

中身まで匡史が変わってないことが。

あの頃の名残りを見つける度、何故だか安心してしまう。


「あぁ、緊張したぁ。だけど、お前の顔見たら、ホっとしちゃった。」

「さっきのニヤニヤはそういう意味?」

「そう。助かった。」

「なら、良かった。」

「オープンしたらもっとこういうの増えるだろうから、お前がいてくれると思うとマジで心強い。」


そうだよね、匡史は今、すごいプレッシャーの中にいる。

その中で元カノとして少しでも役に立てるなら、本望じゃん。

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