君を選んだから
さぁ、今日はそんな匡史のためにも頑張ろう。

細かいものだらけでアイテム数がアホみたいに多い、一番面倒なコスメの棚のレイアウト表、のっけから渡されちゃったけど。


新品のピカピカの什器にきっちり管理シールを貼り付け、ピシっと向きを揃え、商品を並べて行くのは気持ちがいい。

新店オープン準備のための陳列だと基本的に欠品もないし、レイアウト表通りに完璧にできるから尚更。


しかも、こういう時って、大抵の場合は同期コンビの私と須賀くんがペアを組むことになっているから、自然とテンションも上がる。

だから、割り当てられた棚がわかりにくかろうが、面倒くさかろうが、どうでもいい。

一日中、二人でレイアウト表とにらめっこしながら一つの物を作り上げて行くのは、私にとっては楽しい仕事だ。


新店を引っ張って行く立場だけあって、匡史は朝礼の後もずっと、とても忙しそうにしている。

あちこちで呼ばれ、何度も売り場中を行ったり来たり。

ほとんどが確認作業のようだけど、これが全部、頭に入ってるなんてスゴい。


責任者になるって、こういうことなんだろうな。

見てて、素直にカッコ良いなと思うし、今日だけでもだいぶ尊敬した。

仕事上ではこんなに信頼を集める人になったのに、中身は私のよく知っているやんちゃ坊主みたいな匡史のままなのが、ちょっと笑っちゃうけど。

< 88 / 188 >

この作品をシェア

pagetop